次回公演

ウンゲツィーファ⑫
さなぎ

2019年2月8日(金)〜11日(月)

驢馬駱駝(東中野)

『さなぎ』フライヤー画像

昆虫がさなぎになったとき、中身が一度溶けてしまうのだという。
でも成虫は幼虫の記憶を残しているらしい。
僕は人に優しくしたかった。
それは人を傷つけることとさして変わらなかった。
例えば思い出は日に日に姿を変えていった。
同じ時間を過ごした筈なのに、其々の形に変態した。
人に優しくすることは人に冷たくすることだ。
僕はもう全ての心配から釈放されて、
あの人と映画を見たり温泉に行ったりしたいのだ。

どうか、ずっと笑っていられますように。

脚本・演出

本橋龍

劇生

石指拓朗
黒澤多生
近藤強
服部未来
深道きてれつ
松井文
渡邊まな実

あらすじ

大晦日、夕方 5 時。久しぶりに地元に帰ったものの直ぐに家には入りづらく1時間ばかし近所をふら付く。家に着きチャイムを鳴らしてから入る。父がいる。僕は父の目をほとんど見ない。父も僕の目をほとんど見ない。父は幼い頃からの名残りで僕をちゃん付けで呼ぶ。

彼女は今外国にいる。時差があり、 向こうは 5 時間早いので先に年を越した。「明けましておめでとうございます。もう直ぐ追いつきます。」と、ラインを送った。

私は留学生向けの寮の談話室で日本人の友達と、偶々居合わせたどこかの国(アジア系)の女の子と三人で年越しした。カウントダウンして、ジャンプなんかして。彼のラインに「お先ー」なんて返事をする。レンタルしていた車で島の東の端に行って初日の出を見に行く。私たちが日の出を見るころに、彼は年を跨ぐことになる。

インフォメーション

日程

2019年2月8日(金)〜11日(月)

2/8(金) 19:00(初日割対象回)
2/9(土) 14:00 19:00
2/10(日) 14:00 19:00
2/11(月) 12:00 16:00

※受付、開場は開演の30分前。
上演時間は90分前後の予定。

チケット

予約 3,000円
当日 3,500円
※ともに当日精算

初日割 300円引き

会場

驢馬駱駝(東中野)
http://paoco.jp/index.shtml

東京都中野区東中野2-25-6 PAOCOMPOUND 9F

JR線「東中野駅」西口改札より徒歩2分
大江戸線「東中野駅」A1出口より徒歩2分

スタッフ

舞台監督|黒澤多生
舞監補佐|浜田誠太郎
演出助手|山口峻治 浜田誠太郎
照明|小駒豪
美術|本橋龍 小駒豪
音楽|坂口恭平
音響|鈴木智博
フライヤー絵|村井守
フライヤーデザイン|渡邊まな実
WEBデザイン|犬飼勝哉
制作|阿部りん

協力

青年団 無隣館 (株)レトル 情熱のフラミンゴ

コメント

初めてなのに、行った事があるような気がする街。
すっげー楽しかったのに、どうやって行ったか憶えてない呑み屋。
会った事ないのに、好きな奴ら。
それが僕にとってのウンゲツィーファだ。
こないだ観たのが幻じゃない事を、また確認しに行く。

伊賀大介(スタイリスト)

カフカ「変身」に由来を持つウンゲツィーファ。その名に恥じず彼/彼女らは、身に覚えのある物語の中で、空間も時間も観客の意識も変調させる。演劇が「ヤバイもの」であることを思い出させてくれる。

九龍ジョー(ライター、編集者)

ウンゲツィーファを始めて観た時、それまで観損ねていたことを激しく後悔した。
そこには人間が存在していた。
そこには演劇が存在していた。
この二つは実はなかなか両立出来ない。
本橋龍は、舞台の上と舞台の外で、何かを見てしまった奴なんだろう。
信用出来る男だと思う。

佐々木敦(批評家、HEADZ)

倫理観が日に日に下方修正されて、劣悪と言われるべき職場環境や、醜悪とされていい振る舞いが、いつの間にか普通になっている。そんな世界、つまり今の日本で割を食いながら生きる人を、本橋龍はつぶさに描写して淡々と提示する。その距離感が私には、諦念と希望のちょうど真ん中に思える。そこに立つのは相当の胆力と知性と誠実さが必要なはずで、労苦を厭わず彼が演劇をつくり続けていることに心を動かされている。

徳永京子(演劇ジャーナリスト)

格好いい人は出てきません。綺麗な女も出てきません。ちゃんとした人は誰一人出て来ません。出てくるのはいつだって、ちゃんとしてるように見せているふりを頑張ってしてるふりをしてる輩だけです。でも、それが人間の本当で、本橋くんはちゃんと人間です。
ウンゲツィーファにはその血と肉の臭いがぷんぷん漂っています。
要はめちゃくちゃ格好いいってことです。

濱津隆之(俳優、映画『カメラを止めるな!』主演)

北海道戯曲賞の審査員をさせてもらっていて、何十本か戯曲を読んだが、本橋くんのが僕は一番好きだった。今回の作品はどうだろう。出来れば失敗して欲しい。才能ある人は皆、戯曲など書かずにユーチューバーになって欲しい。本橋くんもユーチューバーになって欲しい。

前田司郎(五反田団主宰)

覚えにくい名前の劇団を面白く感じた経験がなく、ウンゲツィーファが面白かったのは衝撃だった。神様のいたずらのような偶然で面白くなっているみたいな緊張が中盤まで続き、まさかこの面白さのまま終わるのかと思ったら終わった、祈りのように。確かな才能、だけど潰しがきかなそう。

枡野浩一(歌人)

本橋くんと僕は、彼が戯曲を書く度に公園で会いとりとめのない話をする仲だ。
風が気持ちいい夜の公園で、ブランコやベンチにはいつも恋人たちがいて見つめ合ってささやいている。
僕らは。記憶について、一緒に住んでいた動物のこと、宇宙犬のこと、オホーツク海の透明な黒さのこと、カフカの変身、恋、アンカル、告白、パラレルワールドでは今頃って話や、時間のこと、遠い国に行ったこと、遠い国で暮らしていること、夕陽は沈んでいま星が出てきたよ、そっか、こっちはいま朝陽が昇り始めたよ。
実は次の作品は-----。

恋人たちが帰った頃、ふたりで煙草に火をつけて白い煙をふかふか浮かせ。
何年か経って、かつての僕らの時間を想うとき、ウンゲの公演タイトルを見ればすぐにそのページが開けるようになっている。
公演の度に蓄積されていくとりとめのない僕らの会話はどこまでも続いて行くんだろうと思う。

村井守(テレビ制作者、元銀杏BOYZドラマー)